■現職
■教諭
■研修
研修名目で長期派遣したことが違法であるとして県知事に対し県教委委員 長に損害賠償を請求することを求めた住民訴訟において,監査請求は「当 該職員」たる県知事個人に対する損害賠償請求であったのに対し,提起さ 9 れた訴訟は「怠る事実に係る相手方」たる県教委委員長に対する損害賠償 であったところ,監査請求前置を経ていないから不適法と判断しており, その訴訟構造は本件のそれと何ら変わらないから,同様に解すべきである。
イ本件訴えではCら5名が関係職員とされているが,第二次監査請求は同 人らを対象とはしていないから,同人らに係る訴えは不適法である。
(ア) 住民訴訟を提起するためには,関係職員を対象とした監査請求を事前 に行っておくことが法律上の要件とされている。
その趣旨とするところは, 訴え提起の前に,当該地方公共団体内の機関によって監査を行い,是正す べき点があれば,当該地方公共団体内において自主的に是正せしめんとす るものである。
また,住民訴訟において,地方公共団体が職員に対して有 する損害賠償請求権は,各人ごとにその成立要件を異にし,その責任原因 につきその大筋で同一であるときでも,その地位,職務権限,関与の方法 ・程度を異にし,結論に及ぼすべき差異が存する。
そのため,「当該職 員」はもとより,「怠る事実に係る相手方」についても,監査請求の対象 者としていなければ,住民訴訟において,これを請求の対象者とすること は,法の趣旨からしてできないものである。
ところが,本件訴えにおいて は,第二次監査請求の対象とされていたのは,「福岡県知事,福岡県教育 委員会各委員,教育長,F高等学校長及びB教諭」であって,Cら5名は 当時監査請求の対象となった職にあったものではないから,監査請求を経 たとはいえない。
(イ) 前掲(8頁)平成10年7月3日最判は,「住民訴訟においては,そ の対象とする財務会計上の行為又は怠る事実について監査請求を経ている と認められる限り,監査請求において求められた具体的措置の相手方とは 異なる者を相手方として右措置の内容と異なる請求をすることも,許され ると解すべきである。
」と判示しているが,その判示からしても,どのよ うな場合においても,監査請求の対象者と異なる者を住民訴訟の対象者と 10 することができるとは解することができない。
同最判の事案は,町有地と 道路予定地との交換契約を違法として争い,監査請求においては契約の相 手方を人的対象としていたのに対し,訴訟では当該土地の一部転得者と抵 当権者を人的対象としたものであって,同最判の判断は,?監査請求にお ける財務会計上の行為として「契約の締結」が明示されており,訴訟にお いてもその点に変わりがなかったこと,?事件の係争対象は,不動産に係 る契約の締結であるから,不動産に対する現権利者を相手方とするほうが より直截な紛争解決となることが前提となっているものと解される。
とこ ろが,本件では,そもそも,第二次監査請求の対象とされた財務会計上の 行為と,本件訴えの「怠る事実」という財務会計上の行為とに同一性を認 めることはできないし,また,Cら5名の損害賠償責任の根拠となる不法 行為が本件配置であるとの被控訴人らの主張は,訴訟進行過程において, 論理矛盾の是正のため訴えの変更がなされたことによるものであって,第 二次監査請求の段階では,Cら5名の行為も存在も全く想定されていなか ったものである。
(被控訴人らの主張) ア第二次監査請求と本件訴えの対象の同一性 (ア) 最高裁昭和62年2月20日判決(民集41巻1号122頁)は, 「普通地方公共団体の住民が当該普通地方公共団体の長その他財務会計職 員の財務会計上の行為を違法,不当であるとしてその是正措置を求める監 査請求をした場合には,特段の事情が認められない限り,右監査請求は当 該行為が違法,無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権を当 該普通地方公共団体において行使しないことが違法不当であるという財産 の管理を怠る事実についての監査請求をもその対象として含むと解するの が相当である。
」と判示している。
この判決の趣旨とするところは,財務 会計職員の財務会計行為が違法・不当であれば,当該財務会計行為が無効 11 となり,それに基づいて発生する実体法上の請求権を地方公共団体は行使 するし,それが期待される。
したがって,住民が財務会計行為について違 法・不当であるとして監査請求をした場合には,特段の意思が認められな い限り,実体法上の請求権を行使しないことの違法・不当性も監査の対象 として求めているといえるし,監査委員もこの住民の意思を受けて監査を 開始するのであるから,これにより実体法上の請求権を行使しないことの 違法・不当性を審査する機会が与えられている。
このような観点から,形 式的には「公金の支出」を監査対象にしていたとしても,監査前置主義の 趣旨が尽くされる以上,「怠る事実」についても監査対象に含まれると解 したものである。
(イ) 本件については,以下のとおりいうことができる。
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? 第二次監査請求は,「既に支給した給与・出張旅費分については,公 金支出の最終権限者たる県知事及び教育委員会各委員,教育長,同校校 長,同教諭らが支出相当額を連帯して県に返還すること」というもので ある。
これは,「B教諭に給与等の金銭を支給した行為は違法支出であ るから支払権限者に対して損害を填補させること」はもちろん,「違法 に金銭を受給した教諭,違法に金銭を給付させたことに携わった関係者 に対して損害賠償の請求を行うこと」の双方を含むといえる。
給与支出 の違法の有無だけに絞って監査請求をするのであれば,支払権限を有す る県知事以外の名を挙げて損害を填補するよう求めるはずがない。
? 監査委員は,第二次監査請求を受けて,B教諭の出張日数,出張業務 内容,Fにおける業務内容,出張による支障の有無,県同教・高同教等 の団体の活動内容,枠外配当の手続,職免等の手続等について調査・検 討しており,B教諭に対する給与支出等が違法であったか否かにとどま らず,B教諭を県同教の業務に従事させることに関与した者の責任を問 えるか否かを検討する機会も既に与えられている。
12 ? したがって,本件訴えは監査請求前置の要件を満たしている。
イ第二次監査請求における具体的措置の相手方と本件訴えにおけるCら5 名 (ア) 前掲(8頁)平成10年7月3日最判は,「住民訴訟につき,監査請 求の前置を要することを定めている地方自治法242条の1第1項は,住 民訴訟は監査請求の対象とした同法242条1項所定の財務会計上の行為 又は怠る事実についてこれを提起すべきものと定めるが,同項には,住民 が,監査請求において求めた具体的措置の相手方と同一の者を相手方とし て右措置と同一の請求内容による住民訴訟を提起しなければならないとす る規定は存在しない。
また,住民は,監査請求をする際,監査の対象であ る財務会計上の行為又は怠る事実を特定して,必要な措置を講ずべきこと を請求すれば足り,措置の内容及び相手方を具体的に明示することは必須 ではなく,仮に,執るべき措置内容等が具体的に明示されている場合でも, 監査委員は,監査請求に理由があると認めるときは,明示された措置内容 に拘束されずに必要な措置を講ずることが出来ると解されるから,監査請 求前置の要件を判断するために監査請求書に記載された具体的な措置の内 容及び相手方を吟味する必要はないといわなければならない。
そうすると, 住民訴訟においては,その対象とする財務会計上の行為又は怠る事実につ いて監査請求を経ていると認められる限り,監査請求において求められた 具体的措置の相手方とは異なる者を相手方として右措置の内容と異なる請 求をすることも,許されると解すべきである。
」と判示する。
この判決は, 「財務会計上の行為又は怠る事実」が同一である限り,監査請求において 求めた具体的措置の内容・相手方を問わずに,住民訴訟を提起できるとい う見解を示したものということができる。
つまり,問題とする「財務会計 上の行為又は怠る事実」が同一である限り,監査請求前置の要件を判断す るに当たって,監査請求書に記載された具体的な措置の内容及び相手方を 13 吟味する必要はないというものである。
この考え方は,監査請求により, 監査前置主義の趣旨が尽くされれば,すなわち,自治体内部の自治的な解 決ないし解決の機会が促されたということさえできれば,住民訴訟を提起 することは広く許されるべきであるというものである。
(イ) 本件についていうと,第二次監査請求は,「既に支給した給与・出張 旅費分については,公金支出の最終権限者たる県知事及び教育委員会各委 員,教育長,同校校長,同教諭らが支出相当額を連帯して県に返還するこ と」を求めているところ,これは,「B教諭に給与等の金銭を支給した行 為は違法支出であるから支払権限者に対して損害を填補させること」はも ちろん,「違法に金銭を受給した教諭,違法に金銭を給付させたことに携 わった関係者に対して損害賠償の請求を行うこと」も求めているのである。
そして,被控訴人らは,本件訴えにおいて,違法に金銭を受給させたこと に加担したCら5名に対して損害賠償請求を行うべきであるとの請求を行 っているのであるから,監査請求においてCら5名の名前が明示されてい なくとも,監査対象者の同一性は認められるべきである。
主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由 第1 請求 1 被告らは,原告Aに対し,連帯して1億5993万9849円及びこれに対 する平成18年1月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
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